3軸加速度センサーADXL335の使い方 – 設計編 –

ADXL335 加速度温度センサー センサー

3軸加速度センサーADXL335の使い方を紹介します。

ADXL335は、アナログ出力タイプの3軸加速度センサーで、電源電圧の半分の電圧を0gとして測定範囲±3gの加速度を0V~電源電圧の範囲で出力します。

アナログ出力タイプのセンサーなので、動きを確認するためにADコンバータLTC2450とオペアンプAD822ARも使用します。

ADコンバータは測定値をデジタル化して確認する為に使用し、オペアンプはADXL335の帯域制限用抵抗がアナログ出力に直列に入っているので、この影響を抑えるために使用します。

この帯域制限用抵抗は、センサーの出力にコンデンサを接続するだけでローパスフィルタを形成できる反面、感度低下と帯域制限の原因となるので注意が必要です。

ADXL335の使い方は、『設計編』『確認編』の2回に分けて説明します。今回は設計編です。

ADXL335の主な仕様
測定範囲:±3g(typ)
感度:300mV/g(typ)
零レベル:1.5V(typ)
周波数応答:X軸1600Hz、Y軸1600Hz、Z軸550Hz
電源:1.8V~3.6V
※電源出圧3Vの場合

準備

ADXL335、AD822AR、LTC2450の購入

ADXL335:16端子のLFCSPという形状です。
LTC2450:6端子のDual Flatpack No-leadedという形状です。

どちらのデバイスも手ではんだ付けするのは不可能なのでモジュールの購入になると思います。

AD822AR:8端子のミニDIPもしくはSOICパッケージです。手ではんだ付けは出来ますが、苦手な方はミニDIPを選択すると良いです。

下の写真は、秋月電子通商で購入したADXL335モジュール、LTC2450モジュールと、AD822ARを変換基板にハンダ付けしたものです。

3軸加速度センサー ADXL335

ADXL335モジュールの写真

ADC LTC2450

LTC2450モジュールの写真

オペアンプ AD822AR

AD822ARモジュールの写真

サンプル回路

ADXL335の出力抵抗とLTC2450の入力抵抗の影響を排除するためにオペアンプを入れて回路を分離します。

また、AD変換をするときは、ADの入力範囲を最大限活用するように入力電圧を増幅した方が、精度、分解能、SN比に対して有利になるので、挿入するオペアンプの増幅度がどの程度であれば最適なのかも一緒に検討します。

ADXL335 サンプル回路

使用部品

名称 型名 個数 備考
3軸加速度センサー ADXL335 1 アナログ・デバイセズ
オペアンプ AD822AR 1 アナログ・デバイセズ
ADC LTC2450 1 アナログ・デバイセズ

オペアンプのゲイン計算

オペアンプのゲインを計算します。
ADCの入力範囲ギリギリまでセンサーのアナログ信号を増幅した方が、分解能の高いAD変換が出来ます。

加速度センサーADXL335の仕様

ADXL335の測定範囲とアナログ出力の関係は以下の通りです。
電源電圧の半分の1.5Vを中心に、±3gの加速度で ±0.9V出力が変化します。

測定範囲:±3g(typ)
感度:300mV/g(typ)
零レベル:+1.5V(typ)

ADXL335 感度

ADC LTC2450の仕様

LTC2450の入力範囲とカウント値の関係は以下の通りです。
入力範囲は、3.3V/2 = 1.65V を中心に、0~3.3Vの範囲です。
シングルエンドの入力なので、そのまま0~65536とカウントします。

分解能:16bit
リファレンス:+3.3V(電源をリファレンスとして使用

LTC2450 カウント

入力電圧範囲はレールtoレールです。データシートでは、『理論的に、入力がグランド電位(ゼロスケール入力)の時にオール0、入力がVcc(フルスケール)の時にオール1』のデジタルの結果を出力すると記載されています。

組み合わせたときのADカウント値

ADXL335のアナログ出力とLTC2459を組み合わせた時の結果は以下の様になります。

ADXL335:入力加速度±3gの時のアナログ出力 0.6V~2.4V
LCT2450:入力電圧0.6V~2.4Vの時のADカウント値 11916~47663

ADXL335とLTC2450の組み合わせ

オペアンプのゲインを決定する

上記の計算結果では、少しゲインを上げることが出来そうでしたが、データシートでADXL335の誤差を確認したところ、実際には厳しいことが分かりました。

零レベル:+1.2V(max)
感度:330mV/g(max)

ADXL335の入力加速度-3gのときのアナログ出力は誤差が最大で0.21Vとなり、ゲインを上げられないことが分かりました。よってゲインをとします。

ADXL335 誤差

ADCの入力抵抗と入力容量の影響

ADXL335は、アナログ出力ピンにコンデンサを接続するだけで帯域制限が出来るように、約32kΩの抵抗がセンサーの中で接続されています。

感度低下と帯域制限

ADXL335の出力抵抗が約32kΩ、LTC2450の入力抵抗が15kΩで、これをオペアンプを使用せずに組み合わせると70%も感度が低下します。

入力容量もオペアンプを使用せずに組み合わせると、帯域制限が掛かります。

以下で計算することが出来ます。

感度低下計算
帯域制限計算

LTC2450の入力抵抗15kΩと入力容量0.35pFなど情報は、データシートに示されています。
※入力容量は0.35pFと非常に小さいので、帯域制限の影響はほとんどありません

センサーとADCの分離

上の説明のようにADXL335とLTC2450を直接接続すると感度が低下します。

この感度低下がいつも一定であれば、それほど問題になりませんが、環境の温度が変化した場合などに感度低下の割合が変化しない保証もないので、そのまま接続するのは厳しいです。

このようなときにオペアンプのバッファ回路ボルテージフォロワ)を、センサーとADCの間に入れることによって回路を分離することが出来ます。

バッファ回路(ボルテージフォロア)

理想のオペアンプであれば、

センサーの出力から見たオペアンプの入力抵抗は無限大
抵抗が無限大なので電流が流れません。電流が流れないということは、センサーの出力抵抗が大きくても電圧降下が無いということです。

ADCの入力から見たオペアンプの出力抵抗は零
抵抗が零なので電圧降下が発生しません。ADCの入力抵抗が小さくて電流が流れてしまっても、抵抗が零なのでそこでの電圧降下は発生しないということです。

まとめ

3軸加速度センサー ADXL335、オペアンプAD822AR、ADC LTC2450の組み合わせ計算をしました。

今回のオペアンプはゲインを上げるためではなく、回路を分離する使い方となります。
これにより感度低下と帯域制限を抑えます。

今回は机上の計算なので、実際に回路を作成して設計通りの動作しているか確認していきたいと思います。

続きの『確認編』はこちらです。

プログラミングやソフトウェアの記事です。

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